KNOWLEDGEこんな遺言状では無効になる?

賃貸マンション事業の基礎知識

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こんな遺言状では無効になる?

 前回は「遺言書なんて自分には関係ない」と多くの方々が考えている中、「資産承継」についての考えを整理する意味でも 遺言作成は非常に意義があると申し上げました。しかしながら、遺言書はどう書けばよいのか、 または、書き方が分からないまま遺言書を作られている方もいらっしゃるのではないかと思います。
 そこで、今回は遺言書の作り方、遺言書に法的な効力を確実に持たせるための方法について簡単にご紹介したいと思います。

こんな遺言状では無効になる?

 前回は「遺言書なんて自分には関係ない」と多くの方々が考えている中、「資産承継」についての考えを整理する意味でも 遺言作成は非常に意義があると申し上げました。しかしながら、遺言書はどう書けばよいのか、 または、書き方が分からないまま遺言書を作られている方もいらっしゃるのではないかと思います。 そこで、今回は遺言書の作り方、遺言書に法的な効力を確実に持たせるための方法について簡単にご紹介したいと思います。

遺言の方式って決まっているの?

 遺言の方式は民法が規定しており、大きく分けて「普通方式」と「特別方式」の2つがあります。「普通方式」は一般的に行われている方法であり、 「特別方式」は死が切迫しているときなどのごく限られた場合について認められるものです。「普通方式」としては「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、 「秘密証書遺言」の3種類があります。(特別方式は特殊な状況のみに認められた方式なので今回は解説を省きます。)
■自分で簡単に作ることができる「自筆証書遺言」
 自筆証書遺言は、遺言をする本人がその全文、日付、氏名を自筆で書いて、これに押印することによって作成します。自筆ということなので、ワープロや タイプで書かれた遺言書は無効になってしまいます。筆記用具、紙についての規定はありませんので、極端な話では、布や木でも自筆で書いて押印していれ ば遺言として認められることになります。しかし、一般的には、破れやすい紙、インクがにじみやすい紙は避けて、筆記用具も鉛筆や水性ペンなどは使わな い方が良いでしょう。
 この自筆証書遺言は民法の認める遺言の方法の中で最も簡単なものです。自分で書くことから、遺言を書いたことを秘密にすることができて費用もかかり ません。また、いつでも作成できるという手軽さがあります。しかし、その反面、決められた要件を満たしていない場合は無効になってしまうおそれもあり、 作成後、途中で紛失したり、本人が亡くなった後に遺言書が発見されないケースもありますので注意が必要です。

■遺言の効力が一番確実な「構成証書遺言」
 民法の規定を満たした遺言書を作成すれば、どのような方式の遺言書でも効力を発します。しかし、この「規定を満たす」ということを確実に行うというの は結構難しいものです。では、確実に効力を発する遺言を作成するためにはどうすればよいのでしょうか?その一つの答が「公正証書遺言」です。これは遺言 をする人が、遺言したい内容を口頭で公証人に話して、公証人がこれを筆記して作成するものです。こちらの作成には、証人2人以上の立会いが必要であったり 、作成のための手数料等の費用がかかったりしますが、その遺言書の内容については法律上万全なものであり、その効力が一番確実な遺言方式と言えます。 この公正証書遺言は公証役場で原本を保管してくれるので、紛失・盗難・偽造の心配はありません。自筆証書遺言のように亡くなられた後に遺言書が発見され ないかもしれないというリスクについても心配いりません。一般的に、確実な遺言作成のためには、この「公正証書遺言」が勧められています。

■遺言内容を秘密にできる「秘密証書遺言」
 遺言を作るといっても生きている間は遺言の中身を秘密にしておきたいというケースは多いかと思われます。そのようなときに、遺言の内容を秘密にするた めの方式が「秘密証書遺言」です。これは、遺言者が遺言書に署名捺印をし、これを封筒に入れて、公証人、証人2人の前で自分の遺言書である旨を申し述べる ことによって作成します。その遺言の内容は公証人も全く分かりません。すなわち、遺言書の存在は明らかになるけれども、その内容は秘密に保たれるという ことです。ただ自筆証書遺言と同様に決められた要件を満たさなければ無効になってしまうというリスクには注意が必要です。

遺言と相続の関係について

  遺言は、遺言者の生前の意志をその死後において実現させるものです。特に財産に関する内容が中心になるため、遺言の存在自体やその内容の真実性が 明確に証明されなければトラブルの原因になってしまいます。このようなトラブルを防ぐために遺言の作成方法については民法で厳格に規定されているのです。 その方式については、今、ご紹介させて頂いた通りです。
 民法による法的要件を満たさなければ遺言は無効となり、遺言で意思表示した相続方法は法的な拘束力を失ってしまいます。相続の方法には『法定相続 (民法の規定どおりに財産を分割する方法)』と『遺言相続(遺言により財産の分割が決められている方法)』の2通りがあるわけですが、遺言書があれば、 その財産を遺言という故人の意志に基づいて分割され相続されることになります。しかし、遺言書がない場合は、民法の規定どおり法定相続という形になります。 遺言相続は法定相続に優先するのです。法定相続による資産分割は、法によって画一的に決められているものです。従って、すべてのご家族の方々の事情に応じ て妥当な結果につながるとは必ずしも限りません。ですから、遺言制度が存在する意義は「それぞれのご家庭の状況に応じた相続財産の分配が行えるようにする ため」であると言えるでしょう。
 相続はいつかは直面する人生の節目の1つですが、実際に経験してみなければ実感はわかないかもしれません。遺言は、その作成も自由であり、撤回もまた 自由に行えます。一度、お気軽な気持ちで遺言の作成を行ってみる、あるいは、ご自身の資産状況を把握するために資産の棚卸しを行ってみるのも良いかもしれません。

遺留分って何!?

 ただし、遺言で財産を残す際に注意が必要なものとして『遺留分』があります。
 基本的に遺言があれば財産を自由に処分できるということになります。しかし、被相続人を頼りに生活していた残された家族は、もし全財産を全くの他人に譲る という遺言を残されますと、その後の生活に大きく支障をきたすこともあり得ます。そのため民法では、残された家族の生活を守るという意味で、相続財産のうち の一定割合を家族に残すという制度を設けています。それがいわゆる『遺留分』です。この遺留分が認められていますのは配偶者、直系卑属(子)、直系尊属(父母) です。兄弟姉妹には認められていません。遺留分は原則として法定相続分に対して2分の1となっています。遺言で財産の分割は指定できますが、この遺留分は侵害し てはならないとされています。
 今回は遺言に法的な効力を持たせるための方法を中心にお話せさていただきました。
 遺言書の作成はどの方式で行うにしても「書面で残すこと」が要件です。遺言作成というきっかけで『資産承継』を中長期的に考えてみるのも良いのではないでしょうか。

今回のポイント

・遺言を作成するにあたってはきちんと法的な要件を満たさないと無効になってしまう。
・遺言が無効になった場合、遺言はなかったものとされ、相続は『法定相続』によるものになる。
・遺言の作成に当たって、一般的に最も確実に効力を発するといわれているのは『公正証書遺言』です。
・遺言は一定の形式を守れば自由に撤回・変更ができます。
・いずれの方式で遺言を作成するにしても『書面に残す』ということが要件になります。

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