KNOWLEDGE決して早くない『遺言作成』

賃貸マンション事業の基礎知識

賃貸事業に必要な経営者としての意識
固定資産税・相続税対策を前提とした経営
マンションの工法など、経営に役立つ基礎知識をご紹介します。

遺言作成と資産(土地) 分割のポイント

 「遺言」は何歳から書くことができる(法的に認められる)のでしょうか!? 
答えは満15歳以上です。
「遺言」というと、差し迫った状況下で書くものと思われがちですが、最近では、予め中長期的な視点から考える人が増えています。

決して早くない『遺言作成』

 相続時のトラブルを回避すること…。実はこのこと以上に、早期に遺言作成すべき理由があります。 それは、早ければ早いほど有利になる「資産承継」の計画を考える絶好の機会となるからです。 まずは、気軽な気持ちで考えはじめてみましょう!!

多発する相続トラブル

 身内に死亡という事態が起こったあと、法要、法事の手続きはわかるけど、法律あるいは相続税などの手続きがどのようになっているのかわからない…。 今まで仲の良かった子供たちが相続争いをしている…。
 わが家はどうなるのか…。何か対策はないものか…。
 法的な手続きを進めて行くうえで大切なことは、書類を作成することです。口頭での約束だけでは「言った」「言わない」の水掛け論になりますので、 後日その約束が明確になるよう書類を作成しておくことが重要です。
 相続財産をめぐる争いは、現実に増加傾向にあります。その原因は、色々あると思われますが、仲の良い兄弟が憎しみ合って争いをしている姿は、決して 美しいものではありません。このような争いをできるだけ避ける方策を事前に施しておくことは、大切な家族への一つの責任とも言えるでしょう。

まずは気軽に作成してみる!!

 では、少なくとも何をすればよいのでしょうか。それは、遺言書を作成しておくことです。真剣に身構えて作成する必要はありません。気軽な気持ちで作成すればよいのです。
 「うちの子供たちに限って・・・」は相続財産の争いには通用しません。子供たちにそれぞれ配偶者という第三者が存在する以上、これら第三者の意見も強く反映されるからです。(法律的な問題もかかわってくるのですが)子供たち一人一人きちんと公平に考えたうえで、自分の意思を明確にしておくことが重要 です。状況が変化すればまた新しいものを作成すればよいのです。最近では不動産価格の下落もほぼ落ち着いてきており、今後少しずつ上昇していくことも予 想されます。相続税対策は長期的な視野のもとに行うべきものですので、今こそがチャンスです。

「何」を「誰」に承継させるか…!?

  遺言に明記すべきことは、自分の人生の振り返りや、家族への感謝、自分が去った後の生き方に関する想い…等、「気持ち」の部分ももちろんありますが、 この部分は、各人が自由に想いを託するところですので、このページでは、重要な「資産の承継」に絞り、記してまいります。
 まずは、初めての遺言ですので、大枠を決めることからはじめてみましょう。

ポイントは、「何」を、「誰」に、を決めることです。

 そのためにまず承継するものを、一覧で書き出してみることからはじめてみましょう。
 参考までに前項にも記しましたが、相続税支払いがあった対象資産のうち、その内訳は次のとおりとなっております。
(土地62.4%、株式14.8%、現金8.5%、建物4.3%、その他10.0%) このほか、生命保険金なども承継の対象であり、もちろん相続税の対象にもなります。

資産の特注に注意する

 このように資産は、「土地」や「建物」等、分割しにくいものと、「現金」等、簡単に分割しやすいものに分かれます。
 また、分割のしやすさだけでなく、「資産価値」は同じ1億円でも、課税評価額では軽減評価により相続税が安く済む資産と、そのままの額で評価される 資産があります。例えば、現金は金額そのままの評価ですが、賃貸マンションの建物や建っている土地などは評価が軽減されます。
(建物は、対建築費約45%程度、土地約80%程度の評価)
 更に、承継後の価値(その資産が産む将来的な収益性等)についても、同様に考慮しなくてはなりません。株式などは、値上がり・値下がりの可能性を 合わせ持っています。
 つまり、各々の資産には良い面と悪い面があり、この点で、相続人の間でトラブルが起こることは決して少なくありません。

誰に承継させるのか!?

 上記のように、資産の特性を考慮しながら遺言内容を決めていくことは、差し迫った段階で、急にできるものではありません。前もって調整を図っておく ことや、分割しやすいように資産の組み換えをしておく必要があります。
 「トラブルがないように均等に分ければいい」との安易な考えは、逆にトラブルを招く可能性が高く、注意が必要です。
 そして、次に考えるべきは、「誰」に承継させるかです。
 遺言によって何を誰に承継させるかを明確に決めておけば、トラブルの発生は最低限に抑えられます。
 法定相続分に合わせて決めることなく、「人物の経済力」や「置かれている立場」を考慮し、承継する資産を考えるべきでしょう。
 例えば、子供達が残された妻(母親)と同居することを拒む可能性がある場合や、長男が妻(母親)と同居することがほぼ決まっている場合などは、 住む場所に困らないように、住居を中心とした不動産を相続するように明記します。
 但し、不動産関連は他の資産に比べ資産額が比較的大きくなるのが特徴です。このことから、兄弟間で、承継資産の額の高低について不平が出やすく、 最悪のケースでは、例えば、不動産資産の相続人として指定しなかった次男(法定相続人)から、法定相続人の権利である「遺留分」を主張されるケース もあります。
(※遺留分:民法で定められている法定相続人が、最低相続できる割合)

場合によって最悪のケースも

 その結果、不動産売却によって、資産分割(売却現金配分)を図らなくてはならないケースも少なからず考えられるのです。
 このようなトラブルが想定されるケースでは、「自宅と土地は全て妻(もしくは長男)に与えることとする。」と明記した後に、 「その代わりとして長男は、次男の遺留分相当額を20年間にわたり、現金で支払う」と、遺言に残しておけば、トラブルが発生する可能性は低くなります。

以上が、資産承継について遺言内容を決める際の基本的なポイントです。

 但し、作成された遺言が法的な効力を有するきちんとしたものとするには、書類作成の仕方や、手続きなどで一定のルールを満たさないと、無効となってし まいます。

 また、ご本人の主張を一定のルールに従いきちんと明記しても、効力が及ぶ範囲には制限があり、無効となってしまうケースもあるので注意が必要です。 例えば、「4人兄弟のうち、長男に全財産を残す」と定めても、他の3人は、上述した自分の相続権利(遺留分)を主張することができるようになっています。

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